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小ネタ書き散らし用。


by SSS-in-Black
何が悲しいのだと問われてもわからなかったので仕方なく「悲しいのです」、とだけ返事をした。その時の私には、果たしてその返事を受け取った相手が誰であるかなんてどうでも良かったのだ。ただ私の心に反するような底抜けに明るい曲を流すスピーカーが歌う部屋で、この混沌とした悲しみを誰かに訴えたかっただけなのだ。だから別に相手など気にしなかったのだ。ひとりの部屋で話し相手になりそうなものは携帯電話くらいであろうがそれにかけてくるような知己はいない。つまり私にその悲しみを問うてきた存在は私の妄想か幻想か気の迷いか、そのあたりの何かだと思っていたのだ。もしかしてそろそろ狂ってしまったのかもしれないとも思いとりあえず枕元に放置されていた薬を手にした。「N-03」と青い文字で刻まれている白いタブレットが行儀良くプラスチックとアルミの個室に収まり、今や今やと飲まれる時を待ち望んできらきらしている。眩しい。蛍光灯の青みがかった白い光の中、一粒を解放してやる。原因不明の頭痛と情緒不安定に襲われてから毎日三食後に必ず一錠を服用するよう言われたのだ。しかしそれはするりと指の間をすり抜けてスコアの散乱する床へとついと転がり落ちてやがてぱたんと乾いた音を立てて倒れる。そういえば新しい詞を翠梨からもらってそのままだ。早く曲をつけなくては。そして来週末の路上ライブで初演奏できたら嬉しい。そのためにもまずはこの一錠を喉に流し込んで体を治して意味のない悲しさを追い払わなくては。メンバーの笑った顔が見たくてたまらない、なかなか都合が合わなくて会えない三人組なのに互いが互いに寂しがり屋で求めすぎる。そうきっと、きっと最近会っていないのが悲しい原因なんだ。今度問われたらそう答えようと新しい一錠を口に含んで目を開けたら見事な鷲の翼を生やした犬の顔の部分にある深淵の果てない闇と目があった。

ああ、またあなたが遊びにきてくれたのね。








ちみちみ短編。

読んでいる「リトル・リトル・クトゥルー」が800字を上限に書いているとのことで、それを目指しました。
改行部分を除くとぎりぎりそのくらいでしょうか。

いつもの話とは趣を変えてみました。だから「2.5」なのですが。
紅波さんは知る人ぞ知るの世界に陥ってますが復活させました。


次はまた来雨君達にバトンタッチしますねー。
# by SSS-in-Black | 2009-03-08 15:20 | 【etc.】
「何をしているのかな? もしかしてキミには其処にある鍵穴が見えるのかいそうかいそうかいならば開けたくなるよね。大丈夫その鍵ならその錠は開けられるよ。何せその鍵は彼から貰ったというか渡されたというか押しつけられたんでしょう? それはきっと君の中に彼なりの力を見つけ出したからだよ。彼はこの世界の全てでありこの世界は彼だ。だから彼に判らないことはない。ところで君はコガさんでいいんでしたっけ?」


その男は、そこまでを一口で言い切った。
漸く言葉が途切れたかと思って古閑静火は声のした方へ振り返る。半ば彼女を支配していたのは威圧感と強制感。
振り向かねばならぬ、そしてその声の主を確かめねばならぬ。そういった義務感が彼女を操って振り向かせる。
――夕暮れの図書室の片隅、窓枠に座っていたのは白髪の男であった。




昼の一件から気分が乗らず、帰ろうかと思ったが彼女を思いとどまらせたのは放課後に控えていた委員会の仕事であった。
委員長としてサボるわけにはいかない。そのやはり義務感に誘われて静火は午後の授業を受けたのである。と言っても体育は見学したが。
彼女は図書委員会の長であり、図書室の貸し出しの受付の仕事をこなしていたが、しかし今日に限ってあまり来客はない。
点、転と現れる生徒も三分ほどで去ってゆく。そのうちに夕焼けチャイムが鳴り、鴉が塒へと帰ってゆく。
さて静火はといえば図書室のパソコンを使ってあるものを調べていた。

「くるくる様」、「だごん様」、「旧き神」、そして「銀の世界」。

検索にかけてヒットしたことはヒットした。が、学校のセキュリティシステムのせいで見ることが出来ない。
有害サイトから生徒たちを守るためだとはいえども、都市伝説如きに閲覧禁止コードをしかけていいものなのであろうか。
どうも片っ端から「カルト」なり「宗教団体」なりに引っ掛かってしまう。ということはやはりそういった危ない類のモノなのであろうか? 疑うまでもない。
静火は真っ白なモニタから目を離し、ブレザーの隠しポケットに入れた鍵をごそごそと取り出した。途中で何かに突っかかる。装飾過多な工芸品のような鍵だ、突起や意匠が生地にひっかかったのであろう。丁寧に引っ張り出す。
先日見た(と思われる)あの大きな、三十センチ程の鍵をそのまま縮小したかのような造りだ。とにかく軟体動物の触手やら、鱗やら鰭やらのあまり趣味がよいとは言えないものがついている。
さて、果たして何故これを取り出したのであろう? こんなものを取り出しても何も起こらないと思ったのだが。
だが。


「…?」


貸し出し用の道具一式を収める、貸し出しカウンターの下に設けられた棚の奥。
返却印や日時を押印するための道具が入れられた箱の横に、もう一つ、箱があった。箱というよりは金庫、と表現した方が正確かもしれない。
そんなものがそこにあった記憶はなかった。それより彼女が思わず叫びそうになったのはその金庫が薄暗い棚の奥でも銀色に輝きその表面が奇妙な紋様で埋め尽くされていたからだ。
まるで昨日見た(のであろう)、銀色の門のように。
伸ばしてはいけないと思いながら手を伸ばした。触れた。ひんやりと冷たい。しかしどこか暖かさを感じた。さっきまで誰かが触れていたかのような金属の温さだ。まずこれは金属なのだろうか。もしかして何かの生物ではないのだろうか。
…どうしてこんなに飛躍したことを考えていたのか。そちらに気を取られている間に手はしっかりとその金庫を掴んで引っ張り出していた。
横にあった丸椅子の上に置く。そうやって改めて見ると金庫よりは宝箱といった名称の方がお似合いだ。ただそれにしては小さい。世界史の教科書がぎりぎり入るか入らないかといったサイズだ。厚みも国語辞典が一冊辛うじて収まるほどである。
天地を考えたら天になる向きの面には、蝙蝠の翼を広げた蛸のような生き物が描かれている。その目は閉じられていたが直感が彼女に語りかけた。

――これは昨日の「アレ」だ。

地になる面には猫のような足が四本ついている。あくまでもような、の粋だ。どうして猫の足に鱗が生えていよう。それらが前向きになるように静火は箱を回転させた。
側面には何とも形容しがたい者どもが這いうねっていた。膨張、拡散、収縮、凝固、何と表しても正解でまた外れのような図案が面一杯一杯に広がっていた。
彼女の見つけた一番の喩えは深海から湧き上がってくる泡と魚介類の身体の断片と光であったが、それも何か違う。これはどんな作家であっても詩人であっても表現することは不可能だ。
これはきっと人間の考案した、少なくとも正気の人間が象ったモノではない。狂気に呑まれたかあるいは人類とはまったく別の思考回路と文化様式を持った存在が作り出したモノであろう――例えば、神とか。
が、彼女には一箇所だけ理解できる図案があった。図案というよりそれは凹みであった。つまりそれは鍵穴であった。
正面に来る側面の真ん中に、ぽこりと空いた穴。大きさはそれこそ例の鍵にぴったりの。
机の上に放置されていた銀色の鍵を見た。夕焼けを反射して赤黒く輝いているがその本質は銀色だ。それに手を伸ばす、むしろ何処からかのばされた糸が彼女の全神経を操ってそれに手を伸ばさせ指に掴ませようとした。




そして冒頭の長すぎる一言に繋がるのである。




白髪の男は怪しいかといわれれば十分な出で立ちをしていた。まるで先ほどまで砂漠にいたかのような出で立ちである。
元々は白かったであろう外套はぼろぼろで所々茶色く変色し、また頭に巻いた襤褸布は異端の魔術師と言った風でさえある。そのイメージを更に加速させているのは見事なまでの白髪とその下から垣間見える子供のような輝きを秘めた赤い瞳であろう。
先天的に色素が無かったようには見えない。肌は褐色、砂漠の民のものだ。髪も所々黒い筋が見えないわけではない。でも白髪がそれを圧倒している。目はもしかしたら先天的なものかもしれないがそれに関しては保留にしておこう。
その明白なまでに自らを不審者だと名乗り上げる男は、窓枠から木の床へと音もなく降り立った。ちらりと見えた靴は布製だ。


「私はアブドル・アルハザド。人は私を『狂気の詩人』とか『狂えるアラブ人』とか呼ぶけど、まあ君は好きなように呼んでくれればいいよ」


それにしても友好的でざっくばらんな狂人である。その動作一つ一つが役者の身振り手振りのように隙がない。まるで怪しい壺を売りつけているかのようである。それでいて相手も買ってしまいそうである。よくわからない。
彼はひょいっとカウンターを乗り越えて静火の隣へ。椅子がないのでそれに寄りかかる。静火は何を思ったか箱を机の上に移動させて椅子を差し出した。とてもじゃないが不審者相手にすることではない。かといって彼女の頭の中には先日のように叫ぶなり「だごん様」を唱えてみるなりといった発想は無かった。
一方アブドルと名乗った男は一言礼を言ってそれに腰掛ける。それにしても背が高い。静火が小柄なせいもあり、二人の視線はなかなかかち合わない。


「さーてどこから話そうか。どこでもいいんだけど話すところから話しちゃうと絶対狂っちゃうものねえ。そうだとりあえずそれ開けてみない? 中身はクルウからのプレゼントだよ」


物騒なことを言いながらアブドルは銀色の箱と鍵を示した。そうだこれを開けようとしていたんだっけ。しかしそれがどうしてあの謎の少年・鳥山来雨からのプレゼントになるのだというのだ?
それを聞こうかと思ったが止めた。アブドルは満面の笑顔だ。何となくだが今はまともな応答が返ってこないような気分がする。気分がするだけで実はちゃんと返ってきたりして。でもなんだこのニコニコとした機嫌のいい顔は。
…開けよう。それがいい。静火は決心して鍵を握った。彼女の細い指には似合いの、でもどことなく歪な鍵。他のあらゆる銀細工が稚拙な造りに見えてしまうほどの想像を絶した鍵と箱を目の前に、彼女は息を呑んだ。
一体、中には何が入っているのか。
静火は、細い鍵を小さな深淵へと挿入した。

一瞬、鍵を伝って向こう側から何かに引っ張られるような、それこそ吸盤の無数についた腕に絡め取られたかのような感触が彼女の腕を走った。

そして、箱はあっけなく開く。ぎしぎぎぎ、と軋んで天板が持ち上がる。銀色だ。箱の中までもが繊細でいて大胆な銀色の彫刻に溢れている。
図案はどうも蛇のような、虫のような、それも蛆やその類のものを彷彿とさせる生物が絡み合い、睦み合い、まるでそれがひとつの生物を作り出しているかのようなものであった。ホッブズの「リヴァイアサン」の表紙を何となく彷彿とさせる。
そう、きっとこの絵で表されている存在は、王なのだ――王なる蛇の神。蛆の神。虫の神。静火は残念ながら今時の女子高生にありがちな「虫は基本的に嫌い」という症状を持っておらず、どちらかといえば何か精密な機械やマシンを思わせる虫の構造については興味を抱いていた。どうしてこれが動くのだろう。幼い頃から高校にはいるまでずっと一緒に遊んでいた近所のお兄さんのせいだろうか。今でも気づくと授業中に迷い込んできた天道虫や庭にいた蟷螂を観察しているのである。
そちらにばかり気を取られてしまった静火が箱の中身に気づいたのは、それでも十秒も経たない内であった。そちらの方も十分に怪しげな代物だったのである。

‘De Vermis Mysteriis’

重々しいゴシック体の文字が、表紙に躍っている。それは本のようであった。だが本にしては表紙の質感が妙だ。それこそ金属のような鈍い光を宿している。


「箱から出しても別にその本は君を囓ったりしないと思うけど」
「…」


何だか心配のベクトルがずれているような気がするが放っておこう。放っておいて良いのかは謎だが。
此処までくると、むしろ箱の内装に魅せられてしまった静火は、少し躊躇いはしたがその冷たい表紙に触れた。鉄だ。この本の表紙は鉄で出来ている。しかし錆びや劣化は何処にも見あたらない、それこそついさっき打たれて鍛えられて出来たかのような色つやだ。
世界史の教科書よりも小さく、国語辞典よりも薄いその本は重みがあった。何せ表紙、出してから気づいた裏表紙は鋼鉄で出来ており、またどうも頁は羊皮紙らしい。凝った装丁と言うべきか、ないしは置物や装飾品の域に達していると言うべきか。
例のタイトルの下には、壮麗なゴシック体とは真逆の引っ掻いたかのような文字で‘Ludwig Prinn’と記されていた。ルートヴィヒ、はいいのだが、あとはプリンとでも読むのであろうか。厳つい本にしては可愛い著者である、日本語的な意味で。


「成る程、『妖蛆の秘密』か。またマニアックな一冊を彼はセレクトしたね。あっとまだ開かない方が良いと思うよ、いや一応言ってみただけだよ一応。軽く私に話させてくれないかな、君の生命に関わるどころかこの地球というか世界というか『意識』にも関わるお話だからね」


そう言ってアブドルはひょい、と飛び上がる。そのまま宙に停止して、そこにステージか雛壇があるかのようにくるくると移動する。
昨日はここで海の香りがしてきたのだが、今日は違った。砂だ。乾いた空気の音、香り、感触。水を奪われた大地と空気。死を抱擁する荒野の世界がそこには広がっていた。


「君が握っているのは、人類は知らない方が幸せでいられる世界の秘密――。
私も彼らの秘密を知って破滅へと追いやられた人間のひとりだ。あの時の痛みは忘れたくとも忘れられないよ。
 
彼らはこの地球の外から、もしかしたら私達が『世界』だと思っているこの常識の枠すら飛び越えてやってきたのかも知れない、いわば超越絶対存在。
それをもしかしたら人類は『神』と呼ぶのかも知れないし、『悪魔』と呼ぶのかも知れない。
だが、確実なことはひとつだけ。
――彼らは我々人類のことなんか、ちっとも気にかけちゃ居ないんだ。

私達は何度も彼らに立ち向かったよ。馬鹿だからね。かないっこないんだ。
そこである馬鹿は思い立った。彼らと近づいて、その血を分けて貰おうと。そして絶対的な力を手に入れようと。
――それがその馬鹿はね、成功してしまったんだ。正しくは何人目かの馬鹿だけどね。

そうして生まれた、彼らと我々の血を半分ずつ受け継いだ存在。
…ああ、狂いそうな顔をしているね。見えてるのでしょう、私の周囲で踊り狂う『彼ら』の姿が。
大丈夫、君が使役する権利を手に入れた子達はもっとちゃんとした形をしているよ。何て言えばいいのかな…そんじょそこらにいる蛆とはまた違った姿をしているんだ。まあそれはいいでしょう。それより馬鹿の話ですよ。


薄々感づいて居るんじゃないかな?
彼の者の名はヨグ=ソトース。銀の門の守護者にして鍵にして世界にして時間。全ての包括者であり管理者であり破壊者。
その血を受け継いで生まれたのが、あの少年――クルウ・トリヤマ。


彼の不安定な精神は常に飢えていてね、ほんのちょっとのショックで他者に危害を加えたり殺したり…。
まあしょうがないのさ。…彼は門であり鍵である存在だから、その向こう側と直に繋がってしまう。
向こう側にいるのは…君ならわかるよね。

さて、どうして君にこんな力が渡ったのか――。
残念ながら私にはわからない。けどね、きっとちゃんと意味あってのことさ。
星辰が正しく輝ける夜になれば、全てが組み立ってひとつの形になるのだと思う。

その日まで、君には…四六時中彼に着いてろとは言わないけどね、彼の手伝いをしてやって欲しい。
彼が望んだら、馳せ参じる。…大丈夫、君になら出来る。現に…っと、ここからは話し過ぎかな。
とにかく君には、この本をあげよう。――彼らは意外と寂しがり屋だからね、ちゃんとかまってあげないと君の耳くらいなら囓っちゃうかも。

――さあ、これで私の話は一旦お仕舞いだ。アンコールは受け付けない主義でね。
何か気になったら、クルウに聞くと良い。私も出来るだけ君たちの側にいよう。何せ彼らの存在を人知のものにしてしまった原因の一端は、私にあるのだからね。

…それじゃあまた会えたら、良い夜を。…――」




















「…ねえ、知ってる?」


聞き飽きた枕詞。
それでも聞いてやらなくてはいけないのが、人間社会の掟だ。
なんて鬱陶しい。人付き合いなんて切ってしまいたいくらいにこちらは苛ついているのだというのに。


「『銀色バタフライ』、今度はO駅に出たんだって」
「ふうん」
「ふうんって…。アレってさ、人身事故のあとに出るって言うじゃん? なんか気味悪いよねー」
「…」


ふるふると、携帯が震える。
静火はその送信者名を見ると、またかと思って小さくため息。


『今日はM駅辺りが怪しい感じ。また手伝ってくれない?』


でもいいか、と思って返事を出す。


『いいですよ、私の蝶々で良ければ』


友達曰く――。


「ねえ、最近メール多いけどどうしたの? …まさかあんたに限って彼氏とか…」
「違う違う。…すごく良い友達が出来たの」


そう言ってにっこり笑う、その表情は、何かぞくっとするらしい。
まるで狩人が良い獲物を捕まえたかのような、凄惨なものを孕んだ微笑み。


「…そうだ、いいこと教えてあげようか」
「?」
「今夜はM駅に、それ、出るよ。…きっとね」


そうして。












続いた! 続いたよちょっと!

前作よりちみっとクトゥルフの細かいお話が入って参りました。
一瞬他の小説群にひっかかるお話も出てきましたね。
そういやアブドルさんはあのアブドルさんですよ。名前をこちらから拝借しているので今回は本人役ってことになるのか…?

次こそ未定ですが、今度は何だか不憫な彼を出したいです。
では!
# by SSS-in-Black | 2009-03-05 16:32 | 【etc.】

【100-42】宝石

一振りの剣を前に、メイカは一夜を明かした。

ロッテは一度も目覚めることなく、朝日が部屋に差し込む頃に目を覚ました。


「おはよう、ロッテ」

「…あ、おはようございます…」


一瞬の躊躇いは、唐突に変わった環境のせいであろう。

そもそも彼女はまだ、自分がどこにいてどのような状況に置かれているかも理解していないのだ。

メイカは良心の呵責に苛まれながらも、ミルクを温めるためにベッド脇の椅子を離れる。

剣はそのまま、放置した。


(…もしあの場で彼女を助けなかったら、という選択は無かった。…)


助けなかったとしたら、それは門番の意に反することだ。

またやり直しの命を下されるか、別の旅人が送られてくるかであり、彼女はこうなる定めにあったのだ。

――そう考えなければいけなかった。


(…首切り役人の娘、か)


あまりに似合いの仕事である。

だから門番は彼女を選んだのかもしれない。

あの日、彼女の一族が惨殺される時を狙って、彼女を時空の狭間へと浚い、そのまま歴史の渦の中に埋めてしまえば誰も困らないのだ。

一人の娘の存在など、簡単に闇へと葬られる。

それが「世界」の在り方なのだ。

何故ならその「世界」ですら一枚の「葉」の中で生じた小さなものであり、「意識」のほんの末端でしかないのだから。

それを確か人々はフラクタルと呼ぶのである。

永久に繰り返される螺旋の連鎖、と。


「…メイカさん」

「? どうかしましたか、ロッテ」

「この服って…」

「ああ。お気に召しましたか? 一応着替えに、と用意しておいたのですが…」


それは、門番から渡された服であった。

メイカの白いコートも彼からの支給品である。賜った、とでも言えれば良いのだろうか。そのあたりは微妙だ。

さて、ロッテが着ているのは黒を基調としたかなり厚手の服である。何故かベルトのような装飾が多用され、どこかの民族衣装のような雰囲気を醸し出している。


「…ありがとうございます」

「いえいえ。…おや、その髪飾りは?」

「あ…」


メイカはロッテの髪につけられた、紅い石のついた髪飾りを見た。

年期ものなのか、石を填めた金具は所々が錆びたり汚れたりしていた。その古びた感じがまた良いといえば良いのだが。

ロッテは一度頭の右側で結んだ髪を左へと流し、そのちょうど反対側で、髪飾りを使って留めている。かなり不思議で特徴的な髪型だ。


「…母の、…形見、です」

「…」


少し陰のある、呟きとも独り言ともとれそうな囁き。

少女はそれでも、気丈に振る舞ってみせる。


「…何もないよりは、いいでしょう? 母が誕生日にくれたんです、去年に。…」


濁る、声。

薄い肩ががたがたと震える。

――まだ、乗り越えろと言う方が無理なのだ。


「…よしよし」


メイカはそう言って、幼子にするよう、彼女をぎゅっと抱きしめた。

そう、まるで大切なひとかけらの宝石を、掌で包み込むかのように。





+ + + + +


【メイカの白いコート】…襟元に‘The Maker’と金の糸で刺繍がされている。

【黒を基調とした服】…丈の短いワンピースと長いマントのセット。メイカのように刺繍があるかは不明。

【紅い石のついた髪飾り】…紅い丸い石が中央におさまった髪飾り。かなりの年代ものらしい。
# by SSS-in-Black | 2009-03-05 09:21 | 【etc.】
夜の帳を切り裂く悲鳴――。


真夜中の裏路地に、悲しく響く声があった。
どうもその声の主は学生らしい。恐らく予備校帰りに厄介事に巻き込まれたのであろう。
「工事中」の看板が礼儀正しくぺこりと礼をしている目の前で、彼女は絶体絶命の危機を迎えていた。
目の虚ろな、狂ったように笑い続ける一人の男性が、彼女を袋小路へと追いつめる。
もっと正確に言えば、酔っぱらいが女学生に絡もうとしているというありがちな場面である。
しかしそうは言えども、無理矢理に迫り来る異性というものは恐ろしいのだ。
彼女はただ家へ帰ろうとしていたのに、まさかこんなことになろうとは。
故に叫んだわけなのだが、その声を拾う者は誰もいなかった。
じりじりと追いつめられた場所で、ただただ犠牲となり心にも体にも傷を負わねばならないのか。
それは嫌だ。でも自分には何ができる?


と――彼女は他愛もない噂話を思い出す。




「知ってる、『くるくる様』の話」
「…『くるくる様』ぁ?」

女子高生の、よくある昼休み。
小さなお弁当を食べてから、特に標的も核心もない噂話や小さな出来事でお喋りをする。
その中で突然現れた、ある意味脈絡のない話。
なんて馬鹿々々しい名前なんだ、と思うものの、好奇心はそちらへと向かう。

「うん。別の学校の友達が聞いたらしいんだけど、要は困ったときに助けてくれるヒーローみたいなものらしーよ」
「困ったとき?」
「んとね、例えば酔っぱらいに絡まれた! とか、怖いお兄さんに目を付けられた! とか」
「…つまり迫り来る財布の危機は助けてくれないのね」
「そゆこと。つかあんたまた浪費したの?」
「だってだってー」

そしてこういった会話には常の、次から次へと変わる主題。
よく「あれ、何の話してたんだっけ?」と原点回帰に時間がかかる、そういう学生特有の話し方。
この「くるくる様」の話も、いわゆるよくある「都市伝説」の一つとして、あまたの学生や、下手をすれば大人の間にだって流布しているのかもしれない。
――それをくだらないと一蹴するか、否かはまた別の次元であるが。




彼女は必死に、普段の生活では滅多に使わないほどの速度で灰色の脳細胞を回転させる。




「――ああ、それ『だごん様』の話じゃない?」
「『だごん様』? 『くるくる様』じゃないの?」
「まあ名前が変わるなんてよくあるけどね。話の中身は笑っちゃうくらいそのまんま」
「ふうん…」
「あ、でも『だごん様』の話には、その呼び出し方? みたいのがあったなあ」
「え、助けてー! とかじゃなくって?」
「うん…何だっけなあ。『だごん様だごん様、旧き神をお導きください』だったかな…」
「なんかおカタいね」
「まあ助けてー! よりは信憑性はあるよ」
「確かに」




そうだ、そんな呪文があったような。
窮鼠は唐突に、ダメ元でそれを唱えることにした。
この歳になって呪文やら正義の味方やらを信じるか? と突っ込みを入れられ鼻で笑われそうではあるが、いざという時の頭なんてこんなモノである。
物質としての藁より脆い言葉を、伝説を噂を掴む現代社会人の細い指。
彼女は精一杯の声、とはいえども掠れて殆ど消えた声で呪文を叫ぶ。


「だごん様だごん様旧き神をお導きください、だごん様だごん様旧き神をお導きください、だごん様だごん様…」


最初の気づきから呪文を唱えるに至るまで、凡そ五秒。
追いつめられると人間、何をしでかすかわからないものである。
相手は正直、何処にでもいるただの酔っぱらいだ。
それに対して何故こんなにも大それた行動を取ったのかはよくわからない。
唯、彼女の中にあった思考回路の繋がりがそれを選ばせただけだという、偶然の産物。


「だごん様だごん様…」


七回目の詠唱。
目の前の「敵」はまだそこにいる。
じりじりと近づいてきて、彼女との距離はもう無いに均しい。辛うじて細身の人間が一人入れるくらいであろうか。
一方で彼女の背後の空間もほぼ皆無に等しくなっていた。やはりあと人が一人滑り込めるくらいの場所しか、彼女と礼儀正しい看板との間には存在しない。
他に方法は、変な話いくらでもあった。
よくある話だが一発殴るなり蹴るなり、とにかく相手の注意を逸らせばいくらでも突破口はつくれたのだ。何せ相手はただの酔っぱらいである。
それなのにどうしてこんなにも非現実的な手段に走って抜けられなくなってしまったのか。


「だごん様…」


そして、八回目に突入した時。
アルコール臭く、また少し腐ったような、烏に荒らされた生ゴミ置き場を彷彿とさせる臭さの息が彼女に吹きかかった時。
ぎゅっと瞑った目の上から何かの温かさを感じた時。


「こんばんはー」


暢気な声がひとつ、いきなり降ってきた。
背後だ、と思ったが彼女は事情がよくわからなかった。
目を開けても暗い。どうも背後にいきなり現れた何者かが手で目隠しをしているらしい。
さて、その何者かなのだが。
声を手がかりにするなら、彼女よりもはるかに幼い印象を抱く。声変わりを迎えたか、迎えたとしてもそんなに変わらなかったのか。
でも、少年の声であった。ならばグルか? …幸か不幸かそんな感じはしない。
かといって例の「くるくる様」なり「だごん様」なりなのかと言われればそれも怪しい。ネーミング的には正解のようだがそんなに強そうには思えない。
が、今は疑ってかかっている場合ではない。呼びだしてしまったものは呼びだしてしまったもので、とにかく行く末を見守らねばならない。
――この地点で、彼女の思考回路は相当な疲れを感じていた。が、それをそうだと思わせないのも緊急事態というものであろうか。


「ボクを呼んだのはキミだよね? なら良かった。じゃあ今からちょっとぷちってしちゃうからこのまま我慢しててね。ほら、いわゆる『ショッキングな映像が含まれますので』ってやつだからさ。ちょっと我慢しててね、すぐ終わらせるから」


了承も了解も得ないままに話を展開させる。
ボク、というあたりやはり少年なのであろうか。それだけで決めつけるなんて失礼だろうか。
ああもう何て関係のないことを考えているんだ、そうだきっと疲れているんだ。


「そうだねえ、グールかあ…あんまりお腹の足しにはならなそうだけどなあ…いいかな、ルウ?」


彼女の心配などまったく気にせず進んでゆく事態。
まだ目の前には酔っぱらいがいるのであろう。あの独特の吐息がまだ漏れてくる。
それにしても只の酔っぱらいのくせに、この吐き気をもよおしそうな息は何なのだろう。そう考えると口元まで何かがせり上がってきた。吐きそう、吐く、でもあと一歩が踏み込めない。
更に何だか海辺の潮騒の香りまでが漂ってきた。それはいいのだ。問題はその裏で少しずつ空間を満たしつつある市場の臭いだ。魚介類を卸す市場特有の臭い。あの魚臭さ。生臭いのとはまた何か違う、魚屋の前を通ったときにああ魚屋だなと感じる臭い。
あれを濃縮させて酒気を帯びさせたらきっとこんな臭いだ。しかしなんでこんな臭いがするのだ。近くに酒場も魚屋も市場も海もないはずなのに。


「…そう? じゃあぷちっとやっちゃおうよ、ねえ、ボクも楽しみなんだから」


誰と話しているのだろう、この少年は。
気づいたら気づいたでまた吐き気が自己主張をしてくる。でも一体何を吐けというのだろう。お腹は今ペコペコだというのに。
よくわからない朦朧とした頭の中で、きっと今なら魚が口の中から溢れ出てきそうだなと思った。思っただけで現実になりそうな気がした。気がしただけで大変有り難かったのだが。どんな妄想なのだこれは。
そういえば先ほどから妄想? 想像? とにかくそのあたりが激しくなってきたような気分がする。目の前が閉ざされているからだろうか。真っ暗な視界の中で先ほどから渚が私を誘うように揺れている。どうしようもないくらいに蒼い渚と蒼い海だ。
その海から何か、半魚人と言って正しいのかわからないが、鰓のあって目のぎょろりとした人々が這い出してくる。砂浜に散らばる足跡。ぺたぺたぺた、と厭らしい音。
白い波が砕けてまるで蛸の足のように身をくねらせる。強くなる海の香り。
そうだ、人類は海から生じたのだ。人類に限らず、全ての生き物は海から生じたのだ。きっかけは判らない。けれども海というのは全ての存在の母なのだ。その海の底に何かがいるとしたら、あるとしたら、人類は全て懐古の、望郷の念を抱くのであろう。
深海よりももっと深くにある深層意識の何処かに、人々は必ず海への憧れを抱いている。帰ろう、還ろうとして人々は時折海に身を投げたりするのだろうか。きっとそうだ。あれ私は何を考えているのだ?


「おいで、ルウ」


瞬間、視界が晴れた。銀色に世界が染まった。
どこまでが真実なのか幻想なのかわからない。けれど視界が一瞬にして、一瞬だけ変わったのだ。




最初は銀色の塊、まるで門のような荘厳な姿。
威圧されそうな私はその前に立って、右手に鍵にしては大きな、しかしその門にはぴったりの鍵を持っていた。
にこにこと微笑む少年にそれを手渡す。少年はぼろぼろの外套を纏い、魚の顔の骨のような仮面を被っていたが、それでも微笑んでいると思ったのだ。
さて少年は銀色の鍵を門にさした。鍵穴は握り拳が入りそうなほどの大きさだった。
がちゃりと錠が外れる。鍵が抜ける。鍵穴の深淵が私を覗き込む。


目があった。
在ったのは、ぎょろりとした魚の目。
合ったのは、恐怖と畏怖とが混ざり合った感情。


それが瞬きをする前に、扉がぎぎぎ、と軋んで開かれる。
何処にそんな力があるのだと言いたいほどに細い手が、気色悪い意匠の施された観音開きの取っ手を握っている。
悪魔と言うには違う、あらゆる海の魔物の姿が彫られている、錆びた銀色の門。
ソウダソノ門ノ向コウニハ彼ガ眠ル水銀色ノ海ガ広ガッテイルノダ――。




一瞬だった。
ふと霧が晴れたような、光が差したようなやわらかさが私を包み込んだ。
頬に冷たいものが流れていた。それが涙だと気づいたのはたっぷり一分の後であった。
気づけば目の前は、あの路地裏。
酔っぱらいは居なかった。ただ一本、哀しげな哀愁を背負ったネクタイの切れ端が落ちていた。


「ねえ、甘いもの持ってないかな?」


少年の声ががんがんと響く。
よくわからないままに、ブレザーの胸ポケットから飴を取り出す。
振り返れば良かったのだ。だが出来なかった。取り出した飴をひょい、と取り上げられる。
ビニールを破る音。ちゅっ、とどうやら口に含んだ音。
どこまでが現実なのだろうか。これは幻想ではないのか。むしろ最初から全て、そう私の存在さえも、この世界でさえも幻想ではないのか。
なんて私達はちっぽけなのだろうか――無力で救いようのない、がらくたのような存在なのであろうか。


「ん、いちごだ。…ありがとね、えっと…」


その時、自分の名前を告げたか、告げなかったか。
それすら覚えていない。
それほど私は、その時目にした「モノ」に衝撃を受けていた。
声を殺して、泣き叫んでいた。








ナンテ、儚イ、脆イ世界ニ、私達ハ、安穏ト立ッテイラレルノダロウ…――。




















「…どうしたの、いきなり泣き出しちゃって」
「…」


翌日。
そこにあったのは、腫れた目と苺味の飴のカラ。
気づいたら学校にいて、席に座って、授業を受けて。
休み時間にいつものようにくだらない話をする気にもなれず、窓から外を見ていたとき。


「何か、悲しいことでもあったの?」


そう言って話しかけた声は、どこか懐かしさを感じる少年のもの。
声変わりを失敗したかのような、明るい高い澄んだトーン。
何となく顔を上げれば、そこには見知らぬ顔をした少年が。
名札には、「鳥山来雨」の文字が踊っていた。


「…ああ、ごめん。最近あんまり学校に来てなくってね、知らないかも。…もしかしたら、知ってかもだけどね」


ね、と笑う。
その微笑みにも、既視感。


「そうそう…あの飴、美味しかったな。どこで売ってるか、よかったらおしえてよ。ね?」


古閑さん、と、最後に名前を付け足されて。
とすり、と、目の前に一本の鍵が落とされた。
銀色の美しい、しかし異様な紋様が施された鍵が。


「…ようこそ、銀の世界へ。…」


そうして。












…長かった。
最初は「勧善懲悪シーフード系」を目指していたのですが…狂気にぶっとびましたね。仕方ない元ネタが元ネタだから。

えっと、初めてまともに書いたかも知れないクトゥルフネタです。
続いたらすまない。多分設定だけ引っ張って続けることはあり得そうだが…。

ちょっと修行してきます。さらば!
# by SSS-in-Black | 2009-03-04 18:32 | 【etc.】

【100-41】大樹

原初、そこには白と黒が渦巻いていた。

それらはやがて沈殿し、「種」となった。

それは、同時期に生じた「宙」からの光を浴びて芽吹いた。


それはやがて「意識」を持つようになった。

「意識」は「宙」に焦がれ、それを目指すうちに「樹」へと育った。

「樹」は「枝」を巡らせ「葉」を生やし、その一つ一つが「世界」となった。

「世界」は「意識」の「夢」であり、そのひとひらひとひらが少しずつ違った色をしていた。


ところで――「宙」はあまりにも高く、「樹」は自重で崩れ落ちそうになるまでそこを夢見続けた。

そこで「意識」は自らを制御する末端組織を創りだした。

弱った葉や病にかかった葉を喰い荒らす「虫」。

その葉を適切に処理し切り落とす「断罪者」。

常に彼らのことを見守って指示を出す「門番」。


こうした存在に守られながら、「意識」は今日も「夢」――「世界」を生み出し動かしているのだ。





そしてその「意識」は一般に女性名詞として扱われる。

最初に誰が言い出したか等はわからない。しかしそれがしっくりくるために広く使われているのだというだけで。

この話――「世界」の創造――を知る者は限られている。

大半の「葉」、すなわち「世界」においてこの話を知る者は皆無といって良い。

ただそこに介入した「虫」や「断罪者」が何らかの形でこの話を伝えることがある。

また、「樹」のうちもっとも「宙」に近いといわれている「葉」においては、この話自体はやはり流布していないのだが、「意識」や「世界」の考え方を知る者は少なくない。

というのも、その「世界」は特殊な機構の上に成り立っているのだ。

端的に言えば、「意識」の生死を握っている、といったところであろうか。

とにかくその「世界」においては、一見ただの小市民であっても「断罪者」の劣化版のような力を持っている可能性があるのである。

そして「彼女」と呼ばれる「意識」を生かすか殺すかの闘いが、常に繰り広げられているのだ。





さて。

メイカは「断罪者」という「旅人」である。

彼ら「旅人」はほぼ自由に――途中、大半は「門番」の許可を受けなくてはならないが――「葉」と「葉」の上、すなわち「世界」と「世界」を行き来できる。

そのパスポートのような、強大な力を秘めた道具は「鍵」と呼ばれている。

「鍵」は「世界」と「世界」の間にいる「門番」というゲートを通るために必要とされる他、持つべき者が持てば「世界」を滅ぼす力を発揮する。

メイカの「鍵」はティアー・アイズと呼ばれる緑色の輝石であった。

それは己のいる「世界」により形を変えるという、かなり特殊な「鍵」であった。

――彼は今、寝台で再び眠りについたロッテの側で、荷物から取り出したそれを見ている。


「…全く、ただの迷信…ですよね?」


それは、真っ直ぐな白い剣であった。

刀身には透明な輝きを見せる緑色の線が入っており、それは束の所で美しい紋様を描いていた。


「…」


そしてそれが現れる度に、その「世界」ではあることが起こっていた。

――その「世界」の崩壊が。





+ + + + +


【ティアー・アイズ】…ちなみにメイカの出身世界では銃、クレオ達の世界では杖に姿を変えていた。


語りまくったといいますか。
なかなか進まなくて困ってます。
# by SSS-in-Black | 2009-03-03 21:17 | 【etc.】