小ネタ書き散らし用。


by SSS-in-Black

【狂気幻想世界 vol.2.5】鳴螺紅波の友人Nについて

何が悲しいのだと問われてもわからなかったので仕方なく「悲しいのです」、とだけ返事をした。その時の私には、果たしてその返事を受け取った相手が誰であるかなんてどうでも良かったのだ。ただ私の心に反するような底抜けに明るい曲を流すスピーカーが歌う部屋で、この混沌とした悲しみを誰かに訴えたかっただけなのだ。だから別に相手など気にしなかったのだ。ひとりの部屋で話し相手になりそうなものは携帯電話くらいであろうがそれにかけてくるような知己はいない。つまり私にその悲しみを問うてきた存在は私の妄想か幻想か気の迷いか、そのあたりの何かだと思っていたのだ。もしかしてそろそろ狂ってしまったのかもしれないとも思いとりあえず枕元に放置されていた薬を手にした。「N-03」と青い文字で刻まれている白いタブレットが行儀良くプラスチックとアルミの個室に収まり、今や今やと飲まれる時を待ち望んできらきらしている。眩しい。蛍光灯の青みがかった白い光の中、一粒を解放してやる。原因不明の頭痛と情緒不安定に襲われてから毎日三食後に必ず一錠を服用するよう言われたのだ。しかしそれはするりと指の間をすり抜けてスコアの散乱する床へとついと転がり落ちてやがてぱたんと乾いた音を立てて倒れる。そういえば新しい詞を翠梨からもらってそのままだ。早く曲をつけなくては。そして来週末の路上ライブで初演奏できたら嬉しい。そのためにもまずはこの一錠を喉に流し込んで体を治して意味のない悲しさを追い払わなくては。メンバーの笑った顔が見たくてたまらない、なかなか都合が合わなくて会えない三人組なのに互いが互いに寂しがり屋で求めすぎる。そうきっと、きっと最近会っていないのが悲しい原因なんだ。今度問われたらそう答えようと新しい一錠を口に含んで目を開けたら見事な鷲の翼を生やした犬の顔の部分にある深淵の果てない闇と目があった。

ああ、またあなたが遊びにきてくれたのね。








ちみちみ短編。

読んでいる「リトル・リトル・クトゥルー」が800字を上限に書いているとのことで、それを目指しました。
改行部分を除くとぎりぎりそのくらいでしょうか。

いつもの話とは趣を変えてみました。だから「2.5」なのですが。
紅波さんは知る人ぞ知るの世界に陥ってますが復活させました。


次はまた来雨君達にバトンタッチしますねー。
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by SSS-in-Black | 2009-03-08 15:20 | 【etc.】