小ネタ書き散らし用。


by SSS-in-Black

【100-29】約束

そこに、ある真実があった。


「ひっ…だ、駄目だ、話せね」

「なら口を裂くぞ、喋らぬ口などただの飾りだ」


レオンの大剣が男の喉笛、その一寸手前まで迫る。


「この店には我々の反逆者がいた、だから殺したんだ。その際、店にいた者は皆逃げたが、ひとり、逃げない子供がいてな」


がちがちがちがち。


「その子供について、何か知っているか?」


噛み合わない歯と歯の隙間から、ひゅう、と漏れた声。


「ぎ、銀色の髪をした、子、なら」

「ああ、銀色の髪をした、線の細い子供だ」

「俺の、姉の、子供、だ」

「…何故こんな場所に?」

「い、一族の約束に、従っただけだ!」

「…一族の子供の体を売ることが、か?」

「ちっ、違う!」

「なら、何故」

「『真実の見えない子供は売りはらえ』っていう約束が、あるんだ」

「『真実の見えない』? …ならば、やはり」

「ああ! 俺もあの子供も、あの珍しく痛ましい『星薙の一族』さ!」

「…見えない、とは」

「へっ…俺達一族の持つ特殊な眼は、『親に名付けられ』ないと発現しないんだ」


ガン。

やわな壁が、貧弱な拳に、へこむ。


「母親、俺の姉は、あの子供を産んで──死んだ」


みしみしと、亀裂が生じる。

あんな体のどの部分から、こんな力が湧いてきているのだろうか。

やはり、想いか、憎しみや悲しみか。

男は不味い物を吐き出すかのように一言を床に叩き付ける。


「父親は、某国の貴族で、姉が妊娠したと分かるなり、消えた」


体面を、保つが故に。

そして、約束は下される。

小さな、弱い存在に向けて。





+ + + + +


【約束】…一族の繁栄のため、定められた掟。破れば、待つのは破滅のみ。
[PR]
by SSS-in-Black | 2007-01-21 18:58 | 【100 title】