小ネタ書き散らし用。


by SSS-in-Black

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【100-10】調和

「おや…その方とはお知り合いですか、クレオ」

「一応、そういうことらしいけど、どちらかといえば命の恩人かもしれない」

「成程…しかし彼女と撃ち合うとは、腕も度胸もしっかりとしている証拠ですね」


それほどの射手であった、『彼女』は。

心の迷い、風の乱れ、何も生じなかった。

まるで、生まれてきてからずっと、戦いの渦中に身を置いていたかのように、動じなかった。

それが、『魔導人形』。人の形をした、人ではない存在。

そして旅人は、相変わらずその『人にあらざるもの』の気配を感じていた。

そう、目の前に。


「…失礼ですが、名前は」

「ああ、こちらこそ失礼。私の名は、アブドル・アルハザド──お察しの通り、『試作の魔導人形』です」


と。

気付かぬうちに、旅人は再び引金に指をのばしていた。

それを見て、アブドルは笑みを浮かべ、口ずさむ。


「黒き森、住まう我等は籠の鳥、餌を求めて互いを喰らう」

「痩せた地に、住まう我等は籠の鳥、羽を集めて暖を求める」


続けて少女も歌った。

成熟した低い声と、まだ若い高い声。

それらは調和し、美しく響きわたっていく。


「私は『搾取する』のではなく、『与える』人形──いわば、裏切り者です」





+ + + + +


【試作の魔導人形】…『プロトタイプ』のこと。魔導人形の中で、比較的初期につくられたものを指す。『レプリカ』との違いは別の話にて。

【籠】…貿易や出兵を除き、基本的に神国から外へは出られない。

【餌】…利益のこと。基本的に奴隷の輸出によって発生する。

【痩せた地】…神国フィラータのこと。農作物はまず育たない。

【羽】…外へと、解放を望む力のこと。
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by SSS-in-Black | 2006-11-18 07:29 | 【100 title】

【100-9】繁栄

戦火を 知らぬ子は見る 青空を 切り取ったのは 僅かな繁栄


姿を見ればそれは軍人、しかも、女性。

眼鏡の向こうから覗く藍玉色の瞳は、鋭かった。

手には拳銃、腰には長剣、美しい容姿に似合わぬ武装。

彼女は『魔導人形』であった、生まれついての兵士であった。

──おかしい、と思いつつ、だが旅人は真実を全くもって知らない。

人間ではないが、そうだとすれば何者なのだ? …見極めるため、再び構える。

一対一。旅人の脇には少女が立ち、精霊は風をその身に纏わせつつ浮遊している。


「「…」」


呼吸の音は、二つ。

旅人と少女のもののみ。

と──一つの声が、した。


「どこですか、フォルトさん?」

「! ──ここに」


がさがさと、新たな足音。

それが助けか、それとも危機か。

フォルトと呼ばれた女性軍人は、声に答える。

ほぼ同時に旅人は、少女の緊張が解けるのを感じる。


「おやおや、怪我までして…大丈夫ですか? 直ちに帰還して技術開発局へ向かい、修理を」

「はっ」


さっ、と手をあげて敬礼すると、軍人は素早く叢に消える。

そして、現れた男はと、いえば。


「おやおや、お久しぶりですね、クレオ」


白髪紅瞳、すらりと背の高い、やはり軍人。

その姿をみて、少女の顔は、輝きに満ちた。


「アブドル、さん」





+ + + + +


【フォルト・ラン・シエル】…紅茶色の髪に藍玉色の瞳を持つ、魔導人形の女性軍人

【技術開発局】…魔導人形の製作から修理までを手掛ける役所の名


ササミノートよりゲスト出演、フォルト嬢。
本当は相方も出したかったです、が、うん。
暴走しそうで怖くなりましたが何か。
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by SSS-in-Black | 2006-11-09 16:20 | 【100 title】