小ネタ書き散らし用。


by SSS-in-Black

<   2007年 01月 ( 3 )   > この月の画像一覧

【100-29】約束

そこに、ある真実があった。


「ひっ…だ、駄目だ、話せね」

「なら口を裂くぞ、喋らぬ口などただの飾りだ」


レオンの大剣が男の喉笛、その一寸手前まで迫る。


「この店には我々の反逆者がいた、だから殺したんだ。その際、店にいた者は皆逃げたが、ひとり、逃げない子供がいてな」


がちがちがちがち。


「その子供について、何か知っているか?」


噛み合わない歯と歯の隙間から、ひゅう、と漏れた声。


「ぎ、銀色の髪をした、子、なら」

「ああ、銀色の髪をした、線の細い子供だ」

「俺の、姉の、子供、だ」

「…何故こんな場所に?」

「い、一族の約束に、従っただけだ!」

「…一族の子供の体を売ることが、か?」

「ちっ、違う!」

「なら、何故」

「『真実の見えない子供は売りはらえ』っていう約束が、あるんだ」

「『真実の見えない』? …ならば、やはり」

「ああ! 俺もあの子供も、あの珍しく痛ましい『星薙の一族』さ!」

「…見えない、とは」

「へっ…俺達一族の持つ特殊な眼は、『親に名付けられ』ないと発現しないんだ」


ガン。

やわな壁が、貧弱な拳に、へこむ。


「母親、俺の姉は、あの子供を産んで──死んだ」


みしみしと、亀裂が生じる。

あんな体のどの部分から、こんな力が湧いてきているのだろうか。

やはり、想いか、憎しみや悲しみか。

男は不味い物を吐き出すかのように一言を床に叩き付ける。


「父親は、某国の貴族で、姉が妊娠したと分かるなり、消えた」


体面を、保つが故に。

そして、約束は下される。

小さな、弱い存在に向けて。





+ + + + +


【約束】…一族の繁栄のため、定められた掟。破れば、待つのは破滅のみ。
[PR]
by SSS-in-Black | 2007-01-21 18:58 | 【100 title】

【100-28】英雄

そこに、古びた扉があった。

その前に、小柄な男が立っている。

見るからに痩せているが、眼はぎらぎらと輝いて、異様な雰囲気をかもしだしていた。

彼はゆっくりと扉を開ける。まるでひとつ間違えれば壊れてしまうかのように、開ける。

その先に広がっていたのは、無惨にも荒らされた、否、中にいた全てが駆除されたかのような、空間。

人がいたようで、しかし何もいない。床に転がるのは、粗末な椅子や卓の残骸。


「何があったか、知りたいようだな」

「!」


男は即座に短剣を腰元より引き抜くと、声のした方へ向き直る。

そこにいたのは、壁にもたれかかる、無防備な男──レオン。

小柄な男は短剣を携え、突撃する、レオンの懐を狙って。

この距離なら外さない、逃れられない。防ぐことも、ままならないであろう。

鋭く細く、朝日に煌めく剣身が、軌跡を描き…


ガッ。


…不意に、消える。

レオンの前に、立ち塞がる、壁。

それはあの、扉程の大きさを持つ、剣。


「この剣は、普段はただの長剣。だがな、ある種の呪を唱える事により、外装…この分厚くて大きな剣身を呼び出すことができる、優れ物なんだ」

「ひっ…」

「さあ、むしろ知りたいのはこちらの方だ。この店は昨日、潰された」


まるで野菜を刻むかのように、めしりと、巨大剣は短剣を分割する。

軽々と剣を持ち上げ、短剣だったものの断片をはらはらと溢しながら、レオンは言った。


「あんたは何で、ここに来た?」


英雄の剣を、掲げながら。





+ + + + +


【小柄な男】…どうやらレオンの潰した店に何か関係があるらしい。異様に痩せているが、欲望にまみれてもいるようだ。

【ただの長剣】…そうはいえども、切味は抜群。外装を取りつける事で真価を発揮する。

【外装】…虚空から喚び出す召喚物のため、質量は見た目より遥かに少ない。巨大剣の剣身の部分。


進化する武器、みたいな。
『レオ・フラウダ・グレイズ』は、だから英雄の剣。
姿が変わる武器なんてないだろうし、なかなか。外装を召喚すると強力に、とか。
[PR]
by SSS-in-Black | 2007-01-14 00:57 | 【100 title】

【100-27】神秘

「あなた、は…カナデ、なのか?」


そこに、紛れもない記憶の人物がいた。


「カナデ…?」

「……すみません、よく知る人と、似ていたので」


似ていたのではない、同じ、だ。

メイザスの目の前にいる存在は、彼女と同じだ。

儚げで、しかしつやのある銀色の髪。

肌は上品な、どこか冷たさを秘めた白。

そして何よりも、無垢な硝子玉のような、瞳。

だが、彼女といくら似ていても、同じでも、違う。

現に、この子供は、少年だ。どんなに美しい顔立ちをしていても、少年だ。

メイザスの愛した、かの歌姫では、ないのだ。


「旅人さん…知ってるのかい、この少年のことを」

「…いえ、ただ、知人に似ていたので」

「そうか…可哀想な子でな、彼には名前も無いんだ」

「…だからですか」

「?」

「…名前が無いから、こんなにも無垢で、神秘的な眼をしているんです」


名前、それは、個としての誇り。

名のあるモノは皆、眼に特有の輝きや濁りをもっている。

それが全く、この少年の眼には、無いのだ。


「名前か…」

「親父、何か、手掛りとかは…」

「あったらとうに探ってるさ」


そして、レオンは。

夜が明けたらもう一度、あの忌まわしき場所へと赴く事を、決意した。

あの、悲しみと欲望と叫びと嘆きの入り混じった、店へ。





+ + + + +


【名前】…目には見えないが、全ての存在にとって欠かせない器官のひとつ。

【眼】…『目は口程に物を言う』とあるように、他人に意思を伝える大切な器官。
[PR]
by SSS-in-Black | 2007-01-13 23:51 | 【100 title】