小ネタ書き散らし用。


by SSS-in-Black

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【100-34】信念

そこに、ある信念があった。

レオンは再び、外装を剥離する。

足場が消えて、なおもディーバは走り続ける。

彼女の一歩、それは辛うじて元からある刀身の上に乗せられていた。

外見ばかりを気にした靴は既に襤褸となり、剣の鋭さを伺わせる。

赤い靴を穿いて、刻々と深く染まりゆく両足。

それらが握りに到達しようとする直前、均衡が崩れた。

湿った靴が掴まれる。その手も綺麗な紅になる。

細い足首を握りつぶし、引きずり落として床に叩きつける。

女の長い黒髪が蛇のようにのたうち、男の左腕に襲いかかった。

鈍い痛み。それが男を更なる境地へと追いやる。

三度、装着。今度の外装は小回りの利く、いわゆる剣。

叩き潰すように蛇の頭蓋を撃破し、黒い血の吹き出す様から目を守る。

その行為は、正解であった。…血が更に、翼の生えた魚へと変貌する。

魚は水を求めて跳ね、かわしきれずに幾筋かの傷跡をつくる。

それでも右手で剣を振るい、粗方は切断しているのだ。

復活する兆しのないそれらを囮として、ディーバはするりとレオンの背後へ。

彼もただではそこを通さなかった。復活させた視界で彼女の影を捉える。

剣身で強く叩いた。斬れば斬る程、血は彼女の卷族を生み出す。

その行為でほんの少しだけ、毒牙の狙いが外れた。

首に叩き込まんとした有毒の爪が、肩の上を通過する。

細い手首を掴み、反動を利用してまた血塗れの床に叩きつける。

彼女自身、足からの出血が意外と大きいようで、直ぐに立ち上がることはできなかった。

その首筋に、外装を剥離させながらレオンは刃を当てがう。

途端にディーバが詠い出す。それは少しでも耳にすれば、狂気に引きずり込まれる凶器。

血溜まりに魚が跳ねる水音、調子を整える背後での演奏。

だが、それに狂わされる程、獅子の信念は生半可なものではなく。


斬。


最初に呼び出したものと同じ外装が、扉のような巨大剣が、女の腰を切断した。

どこからどう見ても、死に至る一撃。

――それを『急所』に当てなかったこと。

そのただ一つが、獅子の命運を分けた。


「 」


その言葉が何であったかを、知る由はない。

いや、恐らくは、呪詛の類なのであろう。それも使用者の命を蝕むような。

凶悪な呪いの言葉が、凶刃を振るい獅子の身に降り懸かる。


女が口から多量の紅をこぼして事切れる瞬間と、男が同じようにして床に倒れ伏した瞬間は、ほぼ同時。

そして静かに舞い降りる、暫くの沈黙――。





+ + + + +





【急所】…この場合であれば、発声を司る器官としての喉や口のことを指す

【呪詛】…古代種・セイレーンの用いた術。尚、彼ら自身は現在絶滅したとされている
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by SSS-in-Black | 2008-05-06 17:27 | 【100 title】

【100-33】決戦

そこに、ある戦場があった。


「『獅子』のガリレオが、何かこのような猥雑な店にご用ですの?」

「…その『ご用』の意味は、どうとればいい」

「さあ。貴方の思うとおりでいいわ」

「…なら、『ご用』だ」


刹。

華奢な女体の喉笛にまで迫る、大剣。

一度は剥離された外装だが、数分のうちであれば前置きもなく再装着ができる。

それだけではない――更なる危機が訪れ、その魂の震えに呼応して、外装は姿を変える。

ここまで極端に、刀身の長さのみを追求した剣は、使いづらい局面もある。

この姿を解除するには、また一度、剥離を実行しなくてはならない。

諸刃だ。そうではある。そうではあるが、そうしなくてはならなかった。

レオンは、代償を犯してまで、外装を喚び戻したのだ。


「随分と古風な意味ですこと」

「生憎にな。うちの義父が古典好きなんだよ」

「あらあら、まず既婚者であること自体、初耳ですわ」

「残念なことに、嫁さんには死なれちまったけどな。いい娘だったのに」


まるで日向で交わす世間話。

日陰で生死の天秤の上、行われるようなそれではない。


「そういういい奴ばかりが死んで、残るのはあんたみたいな奴だけさ」

「あら…私の顔が好みでないの?」

「どちらかといえば、陰気な厚化粧より、陽気な雀斑の方が俺の好みだ」

「まあ。…新路線の開拓も考えなくちゃいけないわね」

「似合わなそうだけどな」

「…よく言われますわ」


剣先に、微かな違和感。

肉だ。動かしてもいないのに、貫いた感覚がある。

否――それは自ら、貫かれていた。

刀身が撓む。

レオンは忘れていた、ディーバはその肢体で異性を惑わすのだと。

磨かれた肢体は、細く息づくひとつの生命。


「!」


細い身体で、壁際と剣先の間をすり抜る。

強靱な肉体で、剣の背中を駆け抜ける。

気づけば魔性は、既に目の前。


「ごきげんよう、『愚かなる獅子』」


そして視界は、黒に帰す。





+ + + + +





【『ご用』】…レオンはどうやら、悪事に対する使い方で用いたらしい。

【うちの義父】…ガロ爺のこと。名前を出してはならないと、とっさにこう呼んだ様子。



久々にこちらも。
いきなりやりたくなった…ちょこっと強化期間中。
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by SSS-in-Black | 2008-05-03 18:46 | 【100 title】