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小ネタ書き散らし用。


by SSS-in-Black

【100-26】生死

そこに、ある義兄妹がいた。


「また夢を見たのかい?」

「…」

「また、人が死んで、殺される夢?」

「…」

「平気だって、お前は悪くなんかないんだから」

「…だって」

「だってじゃない。あれは話を聞く限り、悪かったのは世間の方だろう? 普通、弱い立場の者は守らなくちゃいけないんだから。師匠だって、毎日のように言ってるだろ?」

「でも…」

「でも、でもない。ほら、こんなことしてたら、師匠が帰ってきちゃった…おかえりなさい」

「ただいま、二人とも…サイレスは、また夢を?」

「そう。だから今こうやって、側にいてあげてるんだけどね」

「…師匠、やっぱり、怖いから、側で寝かせて」

「おやおや、スザク兄さんじゃ不安ですか?」

「そうじゃなくて…落ち着けるから」

「僕じゃ落ち着けないの?」

「…風君が、凄焔のこと、怖がってる…よく、わからないけど」

「成程、サイレスがそう言うならば、そうなんでしょうね。わかりましたよ」

「…師匠ってサイレスには甘いよな」

「そんな事はありませんよ、二人とも大好きですから」

「…ねえ、師匠」

「? 今度は何ですか、サイレス」

「もし私達が無事に『十二使徒』になれたら、やっぱり、戦わなきゃいけないの?」

「いえ、そういうわけでは…でも、大半の使徒は、戦いに借り出されますね」

「…私、嫌だな」

「仕方ないだろ、僕だって嫌さ…でも、仕方ないんだ。居場所はここにしか残されてないんだから」

「…自分の居場所のために、他人の生死を決めなくちゃいけないなんて…」

「…まあ、この話はこれくらいにして、寝ましょうか。今日の疲れを、明日に残さないためにも」

「だね…じゃあ、僕は向こうで…って、裾、引っ張るなよ」

「…あにうえ、も、一緒がいい…暖かいから」

「…わからない奴」

「ふふふ…それでは、おやすみなさい」

「おやすみ」

「おやすみ、なさい」



「おやすみなさい、今は、よい夢を──他人の生死を決めるような立場になるまでは、よい夢を」





+ + + + +

【夢】…出身地の村にて、人を殺してしまった事実に基づいた夢。サイレスの精神的外傷となっている。

【師匠】…アブドル・アルハザドのこと。スザクとサイレスの二人は彼の元、『十二使徒候補生』としての修行を積んでいる。

【風君と凄焔】…属性やその理、精霊としての立場よりも、むしろ何らかの『予感』により、風君は凄焔を恐れているようだ。


やっと繋げました。
by SSS-in-Black | 2006-12-28 23:58 | 【100 title】