【100-26】生死
2006年 12月 28日
そこに、ある義兄妹がいた。
「また夢を見たのかい?」
「…」
「また、人が死んで、殺される夢?」
「…」
「平気だって、お前は悪くなんかないんだから」
「…だって」
「だってじゃない。あれは話を聞く限り、悪かったのは世間の方だろう? 普通、弱い立場の者は守らなくちゃいけないんだから。師匠だって、毎日のように言ってるだろ?」
「でも…」
「でも、でもない。ほら、こんなことしてたら、師匠が帰ってきちゃった…おかえりなさい」
「ただいま、二人とも…サイレスは、また夢を?」
「そう。だから今こうやって、側にいてあげてるんだけどね」
「…師匠、やっぱり、怖いから、側で寝かせて」
「おやおや、スザク兄さんじゃ不安ですか?」
「そうじゃなくて…落ち着けるから」
「僕じゃ落ち着けないの?」
「…風君が、凄焔のこと、怖がってる…よく、わからないけど」
「成程、サイレスがそう言うならば、そうなんでしょうね。わかりましたよ」
「…師匠ってサイレスには甘いよな」
「そんな事はありませんよ、二人とも大好きですから」
「…ねえ、師匠」
「? 今度は何ですか、サイレス」
「もし私達が無事に『十二使徒』になれたら、やっぱり、戦わなきゃいけないの?」
「いえ、そういうわけでは…でも、大半の使徒は、戦いに借り出されますね」
「…私、嫌だな」
「仕方ないだろ、僕だって嫌さ…でも、仕方ないんだ。居場所はここにしか残されてないんだから」
「…自分の居場所のために、他人の生死を決めなくちゃいけないなんて…」
「…まあ、この話はこれくらいにして、寝ましょうか。今日の疲れを、明日に残さないためにも」
「だね…じゃあ、僕は向こうで…って、裾、引っ張るなよ」
「…あにうえ、も、一緒がいい…暖かいから」
「…わからない奴」
「ふふふ…それでは、おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみ、なさい」
「おやすみなさい、今は、よい夢を──他人の生死を決めるような立場になるまでは、よい夢を」
+ + + + +
【夢】…出身地の村にて、人を殺してしまった事実に基づいた夢。サイレスの精神的外傷となっている。
【師匠】…アブドル・アルハザドのこと。スザクとサイレスの二人は彼の元、『十二使徒候補生』としての修行を積んでいる。
【風君と凄焔】…属性やその理、精霊としての立場よりも、むしろ何らかの『予感』により、風君は凄焔を恐れているようだ。
やっと繋げました。
「また夢を見たのかい?」
「…」
「また、人が死んで、殺される夢?」
「…」
「平気だって、お前は悪くなんかないんだから」
「…だって」
「だってじゃない。あれは話を聞く限り、悪かったのは世間の方だろう? 普通、弱い立場の者は守らなくちゃいけないんだから。師匠だって、毎日のように言ってるだろ?」
「でも…」
「でも、でもない。ほら、こんなことしてたら、師匠が帰ってきちゃった…おかえりなさい」
「ただいま、二人とも…サイレスは、また夢を?」
「そう。だから今こうやって、側にいてあげてるんだけどね」
「…師匠、やっぱり、怖いから、側で寝かせて」
「おやおや、スザク兄さんじゃ不安ですか?」
「そうじゃなくて…落ち着けるから」
「僕じゃ落ち着けないの?」
「…風君が、凄焔のこと、怖がってる…よく、わからないけど」
「成程、サイレスがそう言うならば、そうなんでしょうね。わかりましたよ」
「…師匠ってサイレスには甘いよな」
「そんな事はありませんよ、二人とも大好きですから」
「…ねえ、師匠」
「? 今度は何ですか、サイレス」
「もし私達が無事に『十二使徒』になれたら、やっぱり、戦わなきゃいけないの?」
「いえ、そういうわけでは…でも、大半の使徒は、戦いに借り出されますね」
「…私、嫌だな」
「仕方ないだろ、僕だって嫌さ…でも、仕方ないんだ。居場所はここにしか残されてないんだから」
「…自分の居場所のために、他人の生死を決めなくちゃいけないなんて…」
「…まあ、この話はこれくらいにして、寝ましょうか。今日の疲れを、明日に残さないためにも」
「だね…じゃあ、僕は向こうで…って、裾、引っ張るなよ」
「…あにうえ、も、一緒がいい…暖かいから」
「…わからない奴」
「ふふふ…それでは、おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみ、なさい」
「おやすみなさい、今は、よい夢を──他人の生死を決めるような立場になるまでは、よい夢を」
+ + + + +
【夢】…出身地の村にて、人を殺してしまった事実に基づいた夢。サイレスの精神的外傷となっている。
【師匠】…アブドル・アルハザドのこと。スザクとサイレスの二人は彼の元、『十二使徒候補生』としての修行を積んでいる。
【風君と凄焔】…属性やその理、精霊としての立場よりも、むしろ何らかの『予感』により、風君は凄焔を恐れているようだ。
やっと繋げました。
by SSS-in-Black
| 2006-12-28 23:58
| 【100 title】