【HighSchoolSyndrome-Zero】ハジマリ、或いは森に住まう影の話。
2007年 12月 17日
これは、むかし、むかしのおはなし。
あるところに、小さな森と、小さなおやしろがありました。
それは村はずれにあったため、足を運ぶ人も少ない、さびれたおやしろでした。
だから、そのおやしろが風と雨でたおれてしまい、雷で焼けてしまっても、しばらくは気のつく人がいませんでした。
もちろん、そこにまつられていた神様は、かんかんにおこってしまいました。
そこで神様は、森を広げて村をすっかり草木でおおいつくしてしまいました。
そしてその森に、人のせかいにはいない、神様のせかいの生きものを住まわせました。
その生きものはときおり森をぬけだし、ちかくの村をおそいました。
ある時は畑に火をつけ、ある時は家をあらし、ある時は子供をさらう。
それに困った村人は、神様にゆるしをこいましたが、そのすべてがむだに終わりました。
そんなこんなで十年の月日がたち、ある時、ひとりの女の子が言いました。
「わたしが神様に話をしてきます」
その子が歩き出すと、ふしぎなことに、今まであばれていた生きものたちが大人しくなり、森へのみちをあけました。
森の中は暗く、足元も悪かったのですが、やはりその子が通ろうとすると光がさしこみ、道にはやわらかな枯れ葉がつもりました。
やがて女の子はこわれたおやしろにたどりつき、それをなおすと言いました。
「神様、どうかわたしたちのつみをおゆるしください」
するとみるみるうちに、広がった森におおわれた村は元通りになり、神様のせかいの生きものたちも空へかえっていきました。
きげんをなおした神様は、女の子に七つのたからものをわたすと、おやしろの中に消えていきました。
それからというもの、その小さな森と小さなおやしろは、きちんと人の手によって守られていったそうです。
これは、むかし、むかしのおはなし。
⇔
「でも実際は、この森に残ってしまった『神様のせかいの生きもの』がいて、それが相変わらずの悪行狼藉の限りを尽くす…ということでして」
殺風景なログハウスに、テーブルがひとつ、カップがふたつ、チェアがみっつ。
人間はふたり、瞳はよっつ…色は、黒と赤がそれぞれ一対ずつ。
黒い瞳は純粋な闇の色ではなく、蜜の色をしたライトが当たると小さな変化を起こすような色。
まるで、その窓から見える、深い森のような色。
「私は『おやしろを守る人』の末裔で、あなたもそう。そして、この施設の持ち主もそう。…皆、末裔なのです」
「…随分と、毛色の違う末裔同士に見えますけど」
森の瞳の少女がさえずる。
口をつけたココアから、まだ弱々しく立ち上る湯気。
本来ならば柔らかく、優しく可愛らしい様子も、だが何かがおかしい。
少女は森、その中に潜む影…獣の気配をそこはかとなくあたりに漂わせていた。
「…。
中からの力を封じる『兒珠』。
外からの力を抑える『古閑』。
最後に社へつかえる『御仕』。
…唯一、我が御仕家は武道派ではありませんから、確かにそうとも見えますね」
再認識と、再確認。
青年はその年に似合わぬ白髪頭を軽く掻き上げ、合間から覗いた指は細く痩せて。
戦わせたらまず負ける以前の話だが、対する少女もまた小柄中の小柄。床に足が、まるでついていない。
だがその力は、外から推し測れるものではなく、中から湧いてくるもののように…自信が、そこにはあった。
「古閑静火さん、でよろしいんですよね?」
「はい、静火です、御仕さん」
「ああ、私のことは澄でいいよ。…で、あとはこの場にいないけれども、兒珠校長。この三人の『守護者』が揃ったのには、ちゃんとした意味がある」
かたり、カップが置かれた音。
染み入るような静けさに、運命は紡がれてゆく。
それが目に見えないことを祈り、喜ぶことしか、できないとしても。
それは恐ろしいほど正確に、精密に、ひとつの文様を描いて編まれてゆく。
「『女の子』が受け取った『七つのたから』。
その宝が形を変えて、やはり形の変わった少女の手へと、渡る。
それが誰かも、未だまったくわからない、けれども…
『神様のせかいの生きもの』の残党と、真っ正面から潰し合いができるようになって、うまくいけば、我々の使命も果たせる」
長いながい、争いと傷跡の歴史。
澄は一息に語る、その血に流れる時の流れを。
神に呪われた土地を守り、そのことで繋がり続けた、悲しい伝統。
それを、終わらせる。
「…確証は、あるみたいですね」
「勿論。兒珠家は流石、やることが派手で嬉しいですよ」
何故なら。
『学園』という、最強の隠れ蓑を準備していたのだから。
そこでは、どんな人物が居ようとも、どんな事象が起ころうとも、全てが、否定を許さない。
全てが繋がり、分かち合う。
「さて、そろそろ始業式がはじまりますよ…『空蝶学園』の、伝説のはじまりが」
今、ここに。
歴史書は白紙の頁に、新たなる文字を、刻み始めた。
⇔
□御仕澄/ミツカスミ
…白髪赤目、『社』を守る『召』の一族の末裔。
□古閑静火/コガシズカ
…黒髪緑目、『社』を守る『矛』の一族の末裔。
□兒珠―/コダマ―
…外見不明、『社』を守る『盾』の一族の末裔。
⇔
なんだかんだでしょっぱなだけシリアスに。
これからギャグになる、間違いなく、ギャグになる予定。
たまにシリアスなりオカルトなりいれながら、ちまちま書いてきますねー。
初回はとりあえずオリジナルの嵐でした。
あるところに、小さな森と、小さなおやしろがありました。
それは村はずれにあったため、足を運ぶ人も少ない、さびれたおやしろでした。
だから、そのおやしろが風と雨でたおれてしまい、雷で焼けてしまっても、しばらくは気のつく人がいませんでした。
もちろん、そこにまつられていた神様は、かんかんにおこってしまいました。
そこで神様は、森を広げて村をすっかり草木でおおいつくしてしまいました。
そしてその森に、人のせかいにはいない、神様のせかいの生きものを住まわせました。
その生きものはときおり森をぬけだし、ちかくの村をおそいました。
ある時は畑に火をつけ、ある時は家をあらし、ある時は子供をさらう。
それに困った村人は、神様にゆるしをこいましたが、そのすべてがむだに終わりました。
そんなこんなで十年の月日がたち、ある時、ひとりの女の子が言いました。
「わたしが神様に話をしてきます」
その子が歩き出すと、ふしぎなことに、今まであばれていた生きものたちが大人しくなり、森へのみちをあけました。
森の中は暗く、足元も悪かったのですが、やはりその子が通ろうとすると光がさしこみ、道にはやわらかな枯れ葉がつもりました。
やがて女の子はこわれたおやしろにたどりつき、それをなおすと言いました。
「神様、どうかわたしたちのつみをおゆるしください」
するとみるみるうちに、広がった森におおわれた村は元通りになり、神様のせかいの生きものたちも空へかえっていきました。
きげんをなおした神様は、女の子に七つのたからものをわたすと、おやしろの中に消えていきました。
それからというもの、その小さな森と小さなおやしろは、きちんと人の手によって守られていったそうです。
これは、むかし、むかしのおはなし。
⇔
「でも実際は、この森に残ってしまった『神様のせかいの生きもの』がいて、それが相変わらずの悪行狼藉の限りを尽くす…ということでして」
殺風景なログハウスに、テーブルがひとつ、カップがふたつ、チェアがみっつ。
人間はふたり、瞳はよっつ…色は、黒と赤がそれぞれ一対ずつ。
黒い瞳は純粋な闇の色ではなく、蜜の色をしたライトが当たると小さな変化を起こすような色。
まるで、その窓から見える、深い森のような色。
「私は『おやしろを守る人』の末裔で、あなたもそう。そして、この施設の持ち主もそう。…皆、末裔なのです」
「…随分と、毛色の違う末裔同士に見えますけど」
森の瞳の少女がさえずる。
口をつけたココアから、まだ弱々しく立ち上る湯気。
本来ならば柔らかく、優しく可愛らしい様子も、だが何かがおかしい。
少女は森、その中に潜む影…獣の気配をそこはかとなくあたりに漂わせていた。
「…。
中からの力を封じる『兒珠』。
外からの力を抑える『古閑』。
最後に社へつかえる『御仕』。
…唯一、我が御仕家は武道派ではありませんから、確かにそうとも見えますね」
再認識と、再確認。
青年はその年に似合わぬ白髪頭を軽く掻き上げ、合間から覗いた指は細く痩せて。
戦わせたらまず負ける以前の話だが、対する少女もまた小柄中の小柄。床に足が、まるでついていない。
だがその力は、外から推し測れるものではなく、中から湧いてくるもののように…自信が、そこにはあった。
「古閑静火さん、でよろしいんですよね?」
「はい、静火です、御仕さん」
「ああ、私のことは澄でいいよ。…で、あとはこの場にいないけれども、兒珠校長。この三人の『守護者』が揃ったのには、ちゃんとした意味がある」
かたり、カップが置かれた音。
染み入るような静けさに、運命は紡がれてゆく。
それが目に見えないことを祈り、喜ぶことしか、できないとしても。
それは恐ろしいほど正確に、精密に、ひとつの文様を描いて編まれてゆく。
「『女の子』が受け取った『七つのたから』。
その宝が形を変えて、やはり形の変わった少女の手へと、渡る。
それが誰かも、未だまったくわからない、けれども…
『神様のせかいの生きもの』の残党と、真っ正面から潰し合いができるようになって、うまくいけば、我々の使命も果たせる」
長いながい、争いと傷跡の歴史。
澄は一息に語る、その血に流れる時の流れを。
神に呪われた土地を守り、そのことで繋がり続けた、悲しい伝統。
それを、終わらせる。
「…確証は、あるみたいですね」
「勿論。兒珠家は流石、やることが派手で嬉しいですよ」
何故なら。
『学園』という、最強の隠れ蓑を準備していたのだから。
そこでは、どんな人物が居ようとも、どんな事象が起ころうとも、全てが、否定を許さない。
全てが繋がり、分かち合う。
「さて、そろそろ始業式がはじまりますよ…『空蝶学園』の、伝説のはじまりが」
今、ここに。
歴史書は白紙の頁に、新たなる文字を、刻み始めた。
⇔
□御仕澄/ミツカスミ
…白髪赤目、『社』を守る『召』の一族の末裔。
□古閑静火/コガシズカ
…黒髪緑目、『社』を守る『矛』の一族の末裔。
□兒珠―/コダマ―
…外見不明、『社』を守る『盾』の一族の末裔。
⇔
なんだかんだでしょっぱなだけシリアスに。
これからギャグになる、間違いなく、ギャグになる予定。
たまにシリアスなりオカルトなりいれながら、ちまちま書いてきますねー。
初回はとりあえずオリジナルの嵐でした。
by SSS-in-Black
| 2007-12-17 21:38
| 【School】